2023年7月5日に発売されたサーフブンガクカマクラ完全版の全曲紹介と旧版との比較をする記事になります。
前半は全曲紹介、後半は旧版との比較になります。

全曲紹介は、わたしの完全な私見と付録の曲解説にも触れながら紹介します。
旧版との比較はエンジニアらしく、Excelのグラフをもちいて分析などしています。
サーフブンガクカマクラ完全版の全曲紹介
下表は曲のリストです。完全版の15曲について紹介していきます。

解説の前にトレーラー(公式の曲紹介)を見ていただくとより良いかもしれません!
アルバム1曲目のリード曲にふさわしい、勢いのある曲で「社会人がんばろう」という気持ちにさせてくれます。
アジカンの12枚目のシングルで、ベストアルバムである『BEST HIT AKG』の14曲目にも収録されている代表曲です。
MVもあります。
Vo/Gtの後藤さん(以下Gotchさん)いわく、大学を卒業して営業の仕事をしていた時のことを思い出しながら書いた曲とのこと。「ビジネススーツというのは、何もかも投げ出して江ノ電で海まで行ってしまいたい衝動を抑える設計になっている」というコメントが共感できますよね。
【完全版】はGotchさんの低音ボイスのコーラスも重なり、本当にゾクゾクする曲に仕上がっています。
【完全版】に新しく収録された曲で、ちょっとおふざけ感のある仕上がりになっています。[旧版]の鵠沼サーフのような展開になるのかな?という部分をいい意味で裏切ってくれる曲です。
Gotchさんは石上駅で降りたことは一度もないらしいです。歌詞に[スマホ]というワードが出てくるあたり、アップデートしたアルバムになっているなと感じさせられます。
ギターの喜多さんは何か弾いておかないと気が済まないタチらしく、イントロから0:25の「~世界が溶けていく」のパートまで演奏を休んでくれたのが奇跡だったとか。とはいえ、開始2秒の「フィフィン」という空ピッキングからもわかるように、ライブではゴリゴリ演奏を入れてくるかもしれませんねw。
ポジティブな気持ちにさせてくれる曲。「今日はまだまだ終わりじゃない、君らしく踊ればいいじゃない」という部分が好きですね。
2022年に発売された29枚目のシングル『出町柳パラレルユニバース』の4曲目に収録されている曲です。『出町柳パラレルユニバース』は映画の主題歌になっています。
『柳小路パラレルユニバース』をシングルで聴いた時に、なぜほぼ同じメロディ?と思っていたのですが、実際には住んだことのない京都(出町柳)で過ごす青春と体験した場所(柳小路)の青春を並列で表現したそうです。なるほどね!
歌詞もほぼ同じで、出町柳は「街の風になって」や「近未来を憂うより」⇔柳小路は「波の風になって」や「BMGはバディ・ホリー」と古都⇔海辺で対比されていて、両方聴くとより楽しめます。
いきなりカウントが始まる【完全版】の鵠沼サーフもカッコいいです。
[旧版]では藤沢ルーザーと江ノ島エスカーをつなぐ2番バッターのようなつなぎの曲という印象でしたが、【完全版】は柳小路と西方を完璧につないでくれるマルチなやつよ。「リアルに何もない・夢ってヤツもねぇ」という歌詞もこれから何者かになる自分の準備期間中という感じで好きです。
【完全版】に新しく収録された曲で、聴けば聴くほど好きになる曲。ギターのジャカジャカ感(パワーポップ感)が心地よいです。

この新曲はMVもあります。
江ノ島のエスカレーターを題材にした曲。メロディ・コード進行もいいですが、サビで「かなたに・エスカー・逃げ込んだ・いつか・わずかに・踊りますか・せかい・いつか・みらい ・走り出した・ように・痛み出した」と韻をふんでいて、ノリノリで聴ける曲になっています。
[旧版]が3曲目と序盤だったのに対して【完全版】は中盤の最初ということで、よりすっと入ってくる感じがします。【完全版】リリースに合わせ、MVも発表されています。
[旧版]も1番好きな曲でしたが、【完全版】でも不動の1位の曲。サビのファルセットを織り交ぜたメロディがたまりません。
【完全版】の方がボーカルのエモさと盛り立てる演奏テクが際立っていて、より泣ける名曲になっております。[旧版]はすごく勢いのある感じで新旧比べて聴いてほしいですね。
聴くだけで海が見える代表曲だとわたしは思っています。
アジカンの30枚目のシングル『宿縁』の3曲目に収録された曲。映画『The First SLAM DUMK』の挿入歌?と予想しましたが関係なかったみたいです。(この曲が作られたときには映画の存在を知らなかったらしいので)
前述のとおり「日坂」は設立当時の駅名で、いまは「鎌倉高校前駅」です。この鎌倉高校はマンガ『スラムダンク』に出てくる湘北高校のライバル:陵南高校(仙道・魚住・彦一がいる高校)がモデルになっているとされています。
・作中の陵南高校の体育館外観が鎌倉高校の体育館と似ている
・陵南高校への練習試合に江ノ電が使われていた(江の島駅を通過する)

疾走感はないですが、のしっのしっと虎視眈々と狙っている感じが好きですね。
散歩曲ですね。メロディも歌詞もふわふわ浮く感じが好きです。
[旧版]では10曲中5曲目、【完全版】では15曲中9曲目とアルバムの中盤の底(=ひと休み)という位置づけだと思っています。わたしは歩いたことはないですが、「七里ヶ浜から稲村ヶ崎というのは散歩するにはとってもいい感じのところで、サーフィンはできないけどサーファーを眺めにいくのはすきだった」とGotchさんが言っています。次の稲村ヶ崎ジェーンが遊び心満載のノリノリ曲なのは、この辺の心情が表れていそうですね。
「海辺のファーストキッチン・絶え間ない談笑に」という歌詞があるのですが、そのファーストキッチンはなくなってしまったので、【完全版】では「海辺のファーストキッチン・いまはない談笑に」と歌詞がかわっています。
アルバム一番のパワーポップな曲。ライブで聴いたら思わずおどりまくるだろう曲。
サザンオールスターズの桑田さん映画&アルバム作品『稲村ジェーン』から引用されたとのこと。稲村・・・で連想するのがこれだったと!
歌詞にも遊び心がちりばめられていてすてきです。
9曲目の七里ヶ浜→稲村ヶ崎→極楽寺→長谷→由比ヶ浜の5曲は[旧版]も【完全版】もつづきになっていて、新旧のファンの心が合致すること間違いない!!
『長谷サンズ』と「馳せ参ず(る)」をかけた曲で、フィナーレ前の最後のノリノリ曲。
Gotchさんのイメージでは、鎌倉=武士ということらしい(幕府あったしね)。それで「馳せ参じる」というキーワードが浮かび、駅名とかけ合わせたのですね。
やはり2:48〜の2回目のサビ「特別なことはないよ。秀逸な才能もないけど」で泣ける。
Gotchさんいわく「ただの名曲」というこの新曲は、フィナーレにふさわしい泣ける曲。
この曲をフィナーレといったのは、ベースの山田さんも言っているように「和田塚ワンダーランドが入ったことで、鎌倉グッバイがエンドロールみたいになった」というのは完全に同意です!
[旧版]を作るときに最初にタイトルが決まった曲だったけど、当時はそれに合った曲が書けなかったので[旧版]には入らなかったそうです。アコースティックギターがエンドロールを連想させる一曲。ギターの「ファン」という波の擬音がちりばめられていて、ギターの喜多さんのこだわりっぽいです。このアレンジのおかげで、最後の1音まで聴きたくなる仕上がりになっています。
参考にしたリンク
ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2023 「サーフ ブンガク カマクラ」
2年前に書いた下のリンク記事に比べると、ぶ厚い全曲紹介となりました!(というより、2年前はブログはじめたてだったので文章が拙いだけか。。。)今後も追加情報を入手した時・思いついた時にどんどん加筆していく予定です。

楽天市場(楽天ブックス)では試聴ができますので一度チェックしてみてください。
サーフブンガクカマクラ完全版と旧版を比較
概要を下の表にまとめました。
ジャケットの鳥居を両腕でかかえているところが、「完全版」という感じがしますよね!旧版は片腕が前にでていて、前のめり=勢いありということですかね!?
旧版は計30分ちょっとで、勢いやライブ感の出る一発録りのレコーディング(すべての楽器を同時に演奏して録音する方式)ということもあり、一気に聴けるアルバムです。
対して完全版は5曲増えて計50分となっており、じっくりと聞けるアルバムになっています。(聴いてみるとあっという間に過ぎますが!)
一発録りというワードが出ましたが、反対に1つの楽器ごとに録音する方式を「バラ録り」といいます。
サーフブンガクカマクラ完全版はバラ録りとのことですが、フレッシュさを失わないように少ないテイク(回数)で録音したとメンバーが語っておられます。(参考にしたインタビュー:https://natalie.mu/music/pp/akg07)
一発撮りの勢いみたいなものはないですが、コーラスが2重から3重(Gotchさんの低音ボイス)になっている曲も結構あって、作り込んでいるのがたまりません。
【技術的分析】サーフブンガクカマクラ完全版 vs 旧版
【技術的】の部分をみて、テクニックの解説と思われた方、スミマセン。
そうではなく、私がエンジニアでデータまとめが好きなので、グラフを使ってアルバムの中の流れを見える化したということなのです。
全曲を見える化(グラフ化)してみた
完全版と旧版に点数をつけ、グラフ化してみました。点数は{勢い、音の重さ、コーラスワーク、ベースの重厚感}などで採点しており、「良い・悪い」ではなくノリ=波でいうと「高い・低い」というイメージでとらえてください。
「完全版を初めて含む5周繰り返して聴く→旧版を聴く→もう一度完全版を聴く」のあとに採点しました。その当時のわたしの完全なる主観ですので、参考程度ということで!

上は旧版のグラフです。曲線はExcel機能のひとつの「多項式近似線」で、次数は序盤・中盤・終盤を想定して3次で設定しました。
続いて下が完全版のグラフです。

曲数は増えていますが、全体的な盛り上がりポイントは変わっていないことがわかります。
下のグラフは折れ線のみ重ねたものです。

旧版はすべての楽器を同時に演奏して録音する「一発録り」なので、ハイテンポの曲はとくに勢いがでます。完全版は旧版の尖がっている部分がマイルドになっている感じです。ミドルテンポの曲はベースの重厚感やコーラスワークの重みが際立つので加点されています。
最後に近似線だけ重ねたもの。完全版は中心よりのカーブなので、尖がっているのが取れて心地よい波のように聴くことができます。

細かい分析
- 演奏に余裕感と遊び心があり、楽に聴ける
→Gotchさんのリードギターのあとに喜多さんのギター撮りだったそうなので、楽しんでレコーディングした感がアレンジに出てますね。バラ撮りならではの余裕感と遊び心はこの辺りにあらわれています。 - コーラスが3重になっていてぶ厚い
→Gotchさんの低音ボイスもコーラスに重ねられていて、ジワジワと心に響きます。歌は自分のスタジオで撮ったとのことで、いつもと違うハモリになっていて楽しめます。 - ベースの重低音とうねりがすごい
→ベース好きのわたし的には、旧版と比べてベースがかなりグルービーと感じます。特に車で重低音が目立つ環境だと分かりやすいかもしれません。 - 全体的に音の粒が細かく・揃っているのでキレイ&メリハリが顕著に出る
→15年前と比べると機材の性能も演奏の円熟度も増しているので、もはや芸術の域ですね。何周聴いてもしんどくなることがないです。
Music Video まとめ
サーフブンガクカマクラ完全版に関係するトレーラー、Music Videoが発表されています。
こちらは旧版:藤沢ルーザーのMVです。
サーフブンガクカマクラ完全版のパッケージ
初回限定のパッケージを紹介します。まずはケース↓

中身は下の写真です。
①通常の歌詞カード、②観光マップ(お散歩マップ)+曲の解説、③ツアーの先行抽選コード、④英語の歌詞カード がついています。

③に関して→下図のとおりサーフブンガクカマクラツアーが行われます。(いきたいー!!)
②観光マップ(お散歩マップ)のうらには、曲の解説がかいてあります。


15年の年月をへてアップデートされたサーフブンガクカマクラ完全版は、単なるパワーポップ(はじけるようにポップなサウンドが特徴の音楽)なアルバムではなく、昇華された芸術作品となっています。
アジカンを深く知らない方も一度は聴いてみてほしいアルバムです。
最後まで見ていただき、ありがとうございました。